ギョっとしてバット 登場する連中 扇 真花(おうぎ まか)→15歳。主人公。 闇吸 翼(やすい つばさ)→人の話をあまり聞かないコウモリ女。吸血鬼に非ず。 流貝 鱗奈(ながい りんな)→ぱっと見幼女、中身ドス黒の魚女。人魚に非ず。 第一話・三匹のバカ 「ふう…着いたぜ!」 その日、三月十日。 今年から高校生になる少年が近所の闇江山に来ていた。 自宅から徒歩五分。 着くのに別になんの苦労もかからないが、何だかノリで汗を拭いてポージングしているのが主人公、扇 真花だ。 ちょっと女の子っぽい名前だけど、しっかり男の子。 見た目はちょっとかわいい系だけど、中身は100%男の子。 カッコつけるの大好きだし、よく友達とケンカもする。 「さてと、行くぜ!!」 周囲には誰もいない。 つまり全部彼の独り言だ。 ツッこんではいけない…病気みたいなものだから…ね? ゴホン…ええと、気を取り直して。 彼が山に来たのにはいくつかの理由がある。 まず、この闇江山は彼が小学生になった頃から遊び場にしてきた馴染み深い所なのだ。 そして、今年から未知の世界である『高校』に通うようになる彼は、きっと忙しくなる。 しばらくは来れなくなるかもしれない…そんな少しばかり大袈裟な思いを胸に、真花少年は立ち上がったのだ…!! 「〜♪」 普段は病気の一つ、『カッコつけたがり病』が発動しており、クールボーイを演じている彼だが、この山では無邪気な一少年だ。 満面の笑みで軽々と山を登っていく。 山歩きが趣味とはなかなかシブいが、その趣味の最中の彼はシブくない。 どう見ても年齢より下に見えるほどだ。 今の状況ならば、あっち方面のお姉さん方にはたまらないだろうと言うくらいに。 時にこの闇江山。 真花少年は9年通っているだけあって平気で登っているが、結構しっかりした山なのだ。 そりゃま、有名所の山ほどじゃありませんが、多少歩き慣れた成人男性でも山頂までは一時間以上かかる。 気楽に「行ってきま〜す」出来るシロモノではないのに…大した少年だこと。 「お、今年は早いな…んー、こうして見るとあいつもデカくなったなァ…」 ルンルン気分の真花少年の遥か上空、背の高い杉の木の枝にぶら下がって彼を見下ろす目が二つ。 足で器用に枝を掴み、逆さま状態の不可思議な女の子。 ショートな髪を総立ちにさせながら、かなり怪しくニヤついている。 彼女こそこの山のリーダー格(主ではない。学校で言うなら校長じゃなくて番長みたいな感じ)のコウモリ女、闇吸 翼だ。 「安心して山を楽しみな…いつも通り、オレが守ってやっから…」 潤んだ目で何やらほざいているが、その「守る」行為に真花の意思は1%も働いていない。 と言うかそもそも真花と翼は一度も対面していない。 要は勝手に恋人を気取っている半ストーカー女の妄想だ。 「しっかし…いつ来てもこの山は変わらねえ…来年から来れなくなるのが残念だ…ま、今日はドーンと三年分楽しむ勢いで行くぜ!!」 「なあああああああ!!??」 相変わらずの真花の独り言。 それに過剰に反応したコウモリ女。 「バ、バカなァ!来年から来ない!?何故!?何故!?くっそ〜…そうはさせっか!!今日はもうこの山から離れたくないと思わせてやる  ぞ!!オレを捨てる気かよ!!覚悟してろよチクショー!!」 ※注 真花は翼の存在すら知りません。念のため再確認。 トランスした翼は山の奥へと飛んで行きました…因みに先ほどの彼女のセリフは重複しておりません。 「なぜ」「なにゆえ」と言っておりましたとさ。 さてさて、そんなどうでもいい事は置いておきまして、視線を真花に戻します。 おや? よく見ると、彼の遥か後方でこれまた凹んでいる女性が居る模様。 そちらにズームアップしましょうか。 「クソが!クソが!クソが!(以下繰り返し∞)」 …ええと、視線を真花に戻しまして!! 気付いたらアホ女×2がバカやっている内に、いつもの休憩ポイントに彼は着いてしまいました。 「ふう…お、ちゃんと残ってるじゃん。」 丁度良く存在している切り株に腰掛けた真花が見つけたのは、去年に記念などとほざきながら木の幹に刻んだ印であった。 木からすれば、「テメェみたいなクソガキの名前なんか彫ってんじゃねーよ!大体イテェっつーの!!」なんて所だが、彼を脅かすと翼に 怒られるので黙っている。 そう、木って実は喋ったり動いたりするんですよ。 ただ、大抵の場合は山のボスが許してくれないだけで。マジで。 「今日はどうすっかな…やっぱ何年分ものでっかい記念ってのをやりてーよなあ…」 夢見る少年の目でなんか一人ガッツポーズしている。 若いって良いね。 おっと、そんな彼に一人の少女が近付いて来ましたよ。 ぱっと見、小学校高学年か中学校低学年くらいの。 え?さっきドス黒い事言っていた子じゃないかって?ははは、ナンノコトヤラ… さておき、必死で自分を制して話しかけようとしているみたいです。 よっぽど緊張しているのか、はたまた別の思惑があるのかでかなりガチガチですが…大丈夫? 「はははははじめめめめめま!ま…まーーーして!!」 ダメですね。 「え、ああ…どうも始めまして。」 大丈夫でした。 主人公って万能です。 「わ、わわわ…たし!!ね?うん…その…」 「ま、落ち着きなよ。」 あ、因みに今は例の『カッコつけたがり病』が発動しております。念のため。 「ゲフンゲフン…私!流貝 鱗奈って言うの!そ、その…私もこの山が好きで!」 「ああ…俺もこの山が好きなのさ…よろしく」 「え、あ、うん…」 クッサイ空気が流れておりますが、某風の精霊は残念ながら出てきません。 なのでツッコミ役でも現れない限りはこんなでお送り致します。 「しかし驚きだな…君みたいな小さい子がこの山に来るなんて。結構キツいだろ?」 ※注 真花はキャラ作ってます 「う、うん…ちょっと疲れちゃったカナ…でも、素敵なお兄さんに出会えたし、この山好きだし♪大丈夫だよ〜」 ※注 この女もキャラ作ってます この女、さっき流貝 鱗奈と名乗っておりましたが、コウモリ女同様に人外の存在で御座います。 魚女(人魚ではないらしい)でして、この山の裏側にある川に住んでおります。 毎年毎年、真花少年を影から見つめて早五年。 そろそろストーカーを卒業したいと踏み出した次第で。 「ねえ、私も一緒に行っていいカナ?せっかくこうして会えたんだしぃ…」 「まあ構わないけど。足手まといにはなんなよ。」 「わぁ…ありがとう!!」 こうしてめでたくバカップルが出来まして、出発と相成り… 「そうはいくかァ!!」 …ませんでした。 「え、あんた誰?」 「がーん!!」 突然現れた謎の女。 しかしなんかあっという間に潰れたので、二人は無視して進んでしまいました。 「嘘だろぉ…何でオレを知らないんだよぉ…嘘と言ってくれえ…ってあれ?ちょっと待て!置いていくなよ!お前ら鬼か!!」 ようやくメイン三人が集結…したのかな? ゴホン、取り敢えず出てはきましたね。 さてさてこれからどうなることやら… 次回、ギョっとしてバット第二話「殺戮血祭!宇宙の平和を守るため」に続かない!!